X線回折装置
XRD X-ray Diffraction
結晶構造を持つ物質にX線を照射することで得られる回折線を解析することで物質の同定や定量を行う装置です。
■原理
原子が規則的に並んでいる状態(結晶構造)を持つ物質にX線が照射されると格子面でX線が反射され、それぞれが干渉し合い回折線※1を発生させます。
その時に「ブラッグの条件」※2を満たす角度に回折線が増加され検出されます。
そのほかの角度では回折線はほとんど検出されません。
この事から同じ組成を持つ物質でも原子の配列構造(結晶構造)が異なる場合は異なる角度で回折線が検出されることになります。
※1)回折 : 波(音波やX線など)が物質などの障害物に衝突した時、反射したり物質の背後に回りこんで伝わる現象
※2)ブラッグの条件 : 2dsinθ=nλ
- d:面間隔(格子面間隔)
- θ:ブラッグ角
- n:整数
- λ:入射X線の波長
■X線回折装置での分析例
□クリソタイル(アスベストの一種)のX線回折分析
日本ではアスベストは現在、6種類が法的に指定されており、X線回折装置で分析すると特徴的な回折線を検出することができます。
下にある結果はアスベストの一種、クリソタイルを分析したものです。
様々な建材に使用されてきたアスベストですが、X線回折装置に加え、光学顕微鏡での観察と合わせる事でより正確なアスベスト分析が可能になります。
クリソタイル標準サンプルのX線回折データ
クリソタイル標準サンプルの位相差顕微鏡写真
クリソタイル標準サンプル(社)日本作業環境測定協会
■石英とガラスのX線回折データの比較
石英とガラスはともにSiO2(二酸化珪素)が主成分で構成されていますが、X線回折装置によって測定をすると違いが観測されます。
石英は「結晶質」のため回折線が発生し、ピークを観測することができます。
一方、ガラスは「結晶質」ではないため回折線が発生せず、ピークを観測できません。
このことにより組成分析だけでは判別できない構造の違う異物の混入が発生してもX線回折装置なら分析可能です。